「煙か土か食い物」 舞城王太郎 ★★★★+
---講談社ノベルス・01年、メフィスト賞、このミス8位---

ERで馬車馬のように働くオレのもとに連絡が来た。連続主婦殴打&生き埋め事件におふくろが
巻き込まれたらしい。福井に戻ったオレは愛するおふくろを殴ったヤツに復讐開始だ。

何と言っても特徴はスピーディー&パワフルな文章だ。いちいち改行なんかしない文章の
何がいいってリズムがよくってパワーがよくってハイテンションが読者に移ってやめられない。
暴力的な登場人物多いけど殴られた痛みを追求して描写なんてしないから全然気にもならない。
リアリティはないんだけどそれよりパワーがいいわけで暴力的になった町田康って感じの文章で
ストーリーは四郎の家族の物語とミステリが半分半分どっちもどっちでミステリ部分は読者が
謎を解くようなスタイルではないから本格ミステリが読みたい人には向かないんだろうなぁと思うけれど
ストーリーよりも文章の力なわけで、一旦のってしまうと途中下車できないジェットコースターのような
文章がギュイイインッってなもんで、嫌いな人が多いかもしれない文章だけど自分は意外にはまったわけで
無秩序風な文体に読む前はイヤな予感だったけどリズム感の良さはすごくてなんつーか秩序ある
無秩序って感じで、まるで麻薬みたいに癖になりそうな文章だったのだ。時折見えるユーモアも
面白いし何よりスピード感だよ。人によって好みかどうかは大〜きく差が出そうな作品だし
オススメはさすがにできないから「読むのも一興かもよ」とだけ言っておきますです終わり。

「暗闇の中で子供」 舞城王太郎 ★★
---講談社ノベルス・01年---

前作の続きになりあの暴力的な奈津川家が出てくる物語。今度の主人公は三郎だ。
例によってストーリーはバラバラ殺人などミステリ味の事件が絡むが結局ミステリではなく
謎解きはあっさり解かれ進んでいくのだ。前作は秩序ある無秩序ともいうべきパワー&リズムの
文章にノリノリだったが今回は全然よくなかった。あのパワーが落ち込んだし物語自体が
無軌道になった感じで退屈だったなぁ。暴力的なシーンも悪趣味になってて最悪だ。気持ち悪い
だけの部分とかあったし。それから前後と矛盾する描写…あれは何だ。(ネタバレ)
池の名前とか
橋本の死因とかの違いは、途中から三郎の創作が入り混じっている
(終了)ってことでいいのかな?
っていうかその試みだけでこんな長々と書いたのだろうか。退屈でへぇともふんとも出なかった。
前作は奈津川家の二郎をめぐるゴタゴタが面白かったのに、今回は三郎にもユリオにも興味なしだ。
バラバラ事件のぶっとんだ答えには笑えたが…ストーリーに意味がなさすぎて支離滅裂な感じ。

「屈辱ポンチ」 町田康 ★★★
---文藝春秋・98年---

んん?これは?改行が少なくて、読点をうまく繋いでリズム感よく進む文体は…どことなく
舞城王太郎ではないかと町田小説が初めての私は思ったわけだが、こっちが先なわけですね。
ストーリーはあってないようなもので、訳のわからないものに巻き込まれるような話か。結構ハチャメチャな
展開ですが、誰かが延々と喋っているような文体の気持ちよさとその場のことだけ考えて生きている
主人公の単純さが笑えるのとで楽しめた。坂を転がってるような展開も癖になるね。変な登場人物も
多いし主人公との掛け合いもおかしい。「いい具合に馬鹿な小説」とでも称すれば近いだろうか。
そんなわけで読んでいて面白いというか快感で、この無秩序空間と計算された壊れ方の文章に
ハマってしまうのだが、ラストが純文学でよくあるオチじゃないようなスパッとした終わりなので
余韻が薄いかな。あと縦横無尽すぎる展開が多くてついていけなかったのは残念。
…と、あれこれ感想を言ってもこのトンデモ文章は伝わらない。町田節は好き嫌いがあるのは
間違いないし、合うかどうかは個人個人で試しにパラパラ読んでみないとわからないだろうね。

 「猫のエルは」 町田康 ★★★☆
---講談社・18年---

五編の短編集。猫にまつわる不思議な話系である。「諧和会議」→言葉の世界を獲得した動物たちが集まり会議をする。
内容は猫の暴虐について…そして猫は言葉を理解しているのか、それを調査すべく猿やら犬やらが猫の元へ行くのだが。
というわけわからん話。「ココア」→気づいたら猫サイズになっていて、猫が人間サイズになっていて自分家にも入れんで
困っていたらばココアが助けてくれるわけわからん話。これはあれですね。「猫にかまけて」でも出てた町田家のココアやね。
「とりあえずこのままいこう」→犬として死んで、黄泉の国から特例で元の飼い主のとこへ猫として戻ってしまうという
わけわからん話。などがあって猫を飼っている、飼っていた人にとってはよくわかる猫の生態というか、何もかも
知っているような、何も考えていないような感じが出てるな。世界観も不思議なものであって、童話のような感じだ。
そこまでの町田節の癖の強い文体でもないし、読みやすい。時間つぶしに読むくらいかしら。バカパク(6・6)
 「記憶の盆をどり」 町田康 ★★★★
---講談社・19年---

九編の短編集。カオスな内容の多い町田小説の中ではわかりやすいほうだと思う。
「エゲバムヤジ」→同じアパートの女に、押し付けられた謎の生き物の世話に四苦八苦していたが、次第に物事が
好転するようになり…。「文久二年閏八月の怪異」→失踪事件の依頼から、不穏な真相を探り当てるシンプルな形態の
探偵小説だが、探偵のノリがおかしくおふざけの多い町田的探偵小説。「付喪神」→百年くらいすると意識を持ち始める
茶碗やまないたといった『モノ』たちが、人間を相手に反旗を翻し京都の街を巻き込む大騒動へと発展する。
「挟虫と芳信」→大願王芳信が、広原挟虫の家からモノを盗んでいくらしい。しかし盗まれると後々いいこととなって
帰ってくるそうだ。だから自分が留守にしている間に大願王芳信がたくさん盗むよう唆してほしい…と挟虫に頼まれた僕は
あの手この手で盗ませようとするが…。…といった感じのバラエティに富んだ不可思議な物語を町田節で読めるのであり
ごった煮、八宝菜といった風情の短編集であるが、「山羊経」や「少年の改良」みたいな何やらムニャムニャしてわからん
カオスな物語も少しあってようわからんかったが、トータルでは楽しめたかなぁ。「山羊経」は二番目に登場するので
なんじゃこら、わけワカメと投げる読者がいないかとっても心配しちゃう。茶碗などが話し合いの末に
結託して『気合いで』体を作りビームなどで応戦するという突飛というかバカな物語が普通に成立するのは
作者ならではだろう。でもそんな「付喪神」が一番好きな短編なのであった。バカパク(9・4)
 「52ヘルツのクジラたち」 町田そのこ ★★★☆
---中央公論新社・20年、本屋大賞---

虐待されてきた自らの人生を救ってくれた友人との別れから、一人で生きていこうと九州の海辺の田舎町へ
越してきた貴瑚は、汚い恰好をした少年と出会う。ろくに口も聞かず、全身にはあざがある少年、自らの経験から
放っておくことができない貴瑚。貴瑚を追ってきた友人とともに少年の声なき声を聞き新しい人生へ導いていく。

うーむ、読後感は良かったけどハマらなかったな。貴瑚の過去に何があったのか、と少年の今が交互に進んでいくような
構成で読みやすかったんだけども。人生を搾取されフラフラしていた貴瑚をたまたま見つけ支えてくれたアンさんや美晴。
52ヘルツのクジラの声を教えてくれたルームメイトや少年との出会いだとか、傷ついた者達が支え合う美しすぎるところが
ひねた自分にはハマらない。虐待が色濃く出てくる話なので全然明るくないのに、とても前を向ける暖かな話でもある。
ただ読んでて自分と違和感がだいぶあったのは、貴瑚が小さい頃から虐げてきた相手が逆に要介護の状態に
なった時のこと、貴瑚は支配されていたからそのまま身を粉にして介護してるけど、、自分だったら復讐するわ。
百倍にしてジワジワ苦しめてやるけどね。いや、そもそも虐待など許さないし反撃し続けるわ。…というわけでそもそも
主人公達にイライラしてしまった。本屋大賞らしい万人向けの正統派の一冊だとは思った。シブ青春(5・8)
「バルーン・タウンの殺人」 松尾由美 ★★★☆
---ハヤカワ文庫JA・創元推理文庫・94年、このミス15位---

子供の出産で女性がお腹を痛める必要のない人工子宮が当たり前になった世の中、
それでも母体で出産したいと願う(この世界では)物好きな人々がいた。そんな人の集まる街
バルーンタウン。妊婦だらけのこの街で謎の事件が起こる、それを解く探偵ももちろん妊婦である。

いやぁ、おかしい。登場人物のほとんどが妊婦、相手の顔よりお腹に興味があって
妊娠出産のことばかりの街、妊婦対象・黄金の器コンテストなるものまであるのだ。
妊婦だらけの光景も笑えるし、出てくる女刑事が『あんなお腹になってまで自分で産むなんて
信じられない』と思っている(この世界では普通の考え)のがまた笑えます。街で起こる事件ですが
妊婦の街という設定をどれも生かした謎や謎解きになっていました。中にはホームズの『赤髪連盟』の
パロディ短編もありました(本家のネタバレあり)。もっと謎解きが納得&驚きが欲しかったのですが
この不思議な街が愉快だったので満足でした。楽しく読めるユーモアミステリ短編集ですね。

「バルーン・タウンの手品師」 松尾由美 ★★★☆
---創元推理文庫・04年---

あらすじは前回と同じ。今回も妊婦だらけの街で起こる事件を妊婦探偵が解いていく短編集。

相変わらずの設定で面白い。出産のことばかりに目を輝かせている腹の出た妊婦しか
いないという光景がユーモラス。妊婦の腹を使った占いというのも滑稽でおかしかった。
で、今回も妊娠や出産に関連したことばかりが事件になるわけです。設定は近未来のSFですが
感じとしては日常ミステリですね。SF設定が謎と関連する複雑なものではないし、単に面白い
舞台設定といった程度。謎はそんなに突飛なものはないですが(オリエント急行の短編は
なかなかの解答だが)気軽で楽しい謎解き小説が読みたければちょうどいいのではないかな。
でも街に馴染む意味もこめて本書より前作を先に読むことをオススメ。

「スパイク」 松尾由美 ★★★
---光文社・02年---

ビーグル犬のスパイクを連れて散歩していた私、向かいからスパイクそっくりの犬を連れた
男性がやってきた。なんと名前も同じスパイクだと言う。そんな偶然から男性と知り合い、
来週また会う約束をした私。しかし翌週彼は現れず…なぜかスパイクが喋りはじめた。

現れるはずの彼が現れない、喋るはずのないスパイクが喋る…とあるSFの設定に
よるものです。そしてスパイクを元に戻すため、彼に再び出会うため、私とスパイクの二人が
奮闘するという物語ですね。話自体は単純なんですけど設定が生きてて変わった
手触りがしました。SFでちょっとミステリでちょっと恋愛みたいな話というところです。
サラサラ読めた話ですがオチを先読みしてしまう悪い癖も手伝ってしまい印象薄かな。

「安楽椅子探偵アーチー」 松尾由美 ★★★
---東京創元社・03年---

誕生日プレゼントを購入するため、お金を渡されゲームを買いに来た衛。しかし交差点にある
骨董屋の前で誰もいないのにため息が聞こえたのです。そこにあるのは肘掛け椅子だけ…。
もしや透明人間でもいる?そう思った衛は勢いで椅子を購入してしまいました。四篇の連作短編集。

衛の同級生・ミステリーマニアの野山芙紗が持ち込む謎を、その名の通り安楽椅子の探偵が
見抜いていく物語。安楽椅子がしゃべったり寝たりするのは面白い設定でしたが、基本的に
謎の提示とちょっとした調査と長い真相話…という展開なのでそんなに楽しめませんでしたね。
何せ設定は違えど安楽椅子ものの小説自体は無数にあるし、その中で突出しているかと
言えばそうとは思わなかったです。でも子供が読んで楽しめるという点では成功してますね。
衛が変に大人びてなくて、いかにも子供らしくてほほえましかったです。子供を書くのが上手な作者?

「催眠」 松岡圭祐 ★★★☆
---小学館・97年---

実相寺はニセ催眠術でテレビに出て食いつないでいた。ある日テレビを見たという
女性が猿にかけられた催眠術を解いてほしいと頼んできた。女は突然自分は宇宙人だと
叫び出したり予知能力を見せたりする。実相寺は彼女を占いの館で働かせることにした。
一方、彼女を知ったカウンセリングセンターの嵯峨敏也は彼女が精神の病ではないかと疑う。

「彼女は多重人格ではないか?」という疑いが出るのですが、このネタは多くの作家が
書くのでちょっと飽き気味。しかしこの作品は精神病理や催眠療法を舞台にし、
わかりやすく見せている。しかしそこに終始せず野心を持った人間とのいざこざや
横領事件の謎などがあり娯楽色も強めになっていたので楽しめる作品だった。
催眠療法ってどんなものか、日常で起こりえる催眠状態などの話は「へ〜っ」だった。
ところで文庫の表紙が充血した目の仮面男なのだが内容と全然関係がないのはなぜだ?

「天国の本屋」 松久淳+田中渉 ★★★★
---かまくら春秋社・00年---

大学卒業間際の秋になっても就職の決まっていなかったさとし、コンビニで立ち読みを
しているとアロハシャツの老人が声をかけてきた。よくわからないことを言う老人が手を掴むと
さとしの意識はうすれ、気づくとそこはコンビニではなく本屋だった。老人に言わせると
ここは天国だという。さとしは天国の本屋で臨時バイトとして店長代理をすることになった。

人間は死ぬと天国に行くのだが、天国と言っても現世同様の世界で裏側みたいなもの
という設定である。さとしが本屋で生き生きしていく物語、そしてとある事情で正式に天国に
来ることが出来ず、本屋でリハビリ中のユイという少女との温かい物語でもあります。
作品を包む温かな空気が心地よいです。絶対にハッピーエンドの物語だという安心感があり
展開が多分に読めてしまうことも気にならない。最初に好きになった本ってこんな感じだったん
だろうなと思える『いいお話』でした。挿絵も交えた100ページ程度なので大人も子供も
読みやすいんでないかい?作品中に「泣いた赤鬼」という話が扱われますが、これも良さげ。
たまにはいいですなあこういうハッピーエンド王道もの。ちょっと子供心に返ったぜぃ。

「点と線」 松本清張 ★★★★
---光文社・58年---

九州で起こった心中事件、ある人物が怪しいとにらむ刑事。しかしその男には鉄壁以上の
厚い壁によるアリバイがあった。刑事は何度もはね返されるも壁に挑み続けた。
汚職の影もちらつき…光明は見えるか?

犯人当てではなくアリバイ崩し。特にものすごいトリックがあるでもなく先入観などによる
縄抜けの積み重ねです。どの人物がどの役割を担うのか緻密にできています。
最低限のピースできちっとまとめた作品です。”社会派の新風を巻き起こした”と
書いてありますが別に今となっては真新しくもありません。現代ならすぐ思いつきそうなことを
刑事が見落としているのも古さを感じます。あまりの時代背景の違いに「あんたはアホか!」と
叫んでしまうくらいである。ミステリの歴史を知るってことで読むといい。
真相はちょい意外。200ページちょっとでかなり読みやすい、新潮文庫で出ています。
4点…かなり甘いな

「小説帝銀事件」 松本清張 ★★★
---角川書店・61年、文藝春秋読者賞---

実際に起こった事件を描いたドキュメント小説。
「帝銀事件」は昭和二十三年に起きた。銀行の支店を訪れた男が言葉巧みに銀行員
十数名を誘導し毒薬を飲ませ金を持ち去った事件で、犠牲者は十二人に及んだ。この事件の
容疑者に浮上したのは平沢貞通、彼はマスコミに取り上げられ追い詰められていく。

帝銀事件は大きな冤罪事件として今日でも有名です。この小説は帝銀事件における緻密な捜査経過を
描き、背景にあるものを描こうとしています。細かく記述してあるため「小説」としてはちょっと
読みづらいかもしれません。戦後の日本の問題点について作者が推理しています、勉強の一冊。

「十万分の一の偶然」 松本清張 ★★★☆
---文芸春秋・81年、文春5位---

ニュース写真年間最高賞を受賞した交通事故現場の写真。そのシャッターチャンスは
十万分の一だと言う。婚約者を亡くした男が疑惑を胸に調査に乗り出す。

男の執念の復讐物語でもありました。カメラマンとの心理戦は読ませますね〜、腹の探り合い。
途中、カメラマンとの対決がある形で終結して読者はアレッて感じになります。唐突に大麻の
説明になるし。でも続くんですね〜復讐が。結末は寂しかったです。題材も好きだし読ませ方も
いいのだろうが、説明が細かい所もあってお堅い文章だった。清張の中では好きな作品です。

「黒い空」 松本清張 ★★★
---朝日新聞社・88年---

山内定子の作った結婚式場「観麗会館」、経営を行う婿養子の善朗は定子に頭が上がらない。
しかしある時善朗は口論から定子を殺してしまう。会計係と共に脱税をしていた善朗は死体を
隠すことにした。河越の古戦場から続く怨念が渦巻く。空に舞うカラスは何を暗示するのか…。

この小説、背景に民俗学と日本史があります。冒頭二十ページは歴史の説明で嫌になるかも
しれませんが、そこからは普通の推理小説に近いです(少しは歴史の話は出ますが)。
日本史や民俗学が好きではない方には辛いでしょう、…が逆に好きな人にはたまらないでしょうね。
でも動機は理解できんなぁ〜。そんなことあるかなぁ?ちなみに角川文庫で出てますよ。

「翼ある闇-メルカトル鮎最後の事件-」 麻耶雄嵩 ★☆
---講談社・91年、このミス12位---

京都にある古い城で、私と木更津探偵がやってきた。しかしすでに依頼主は首なし死体の
状態で、足も切断され甲冑の足がついていた。さらに首切り死体は増え続ける。犯人は?動機は?

…なんだこりゃ(怒)。非常に複雑な内容、密室あり、どんでん返しが数度、一応辻褄は合ってる。
豪華な内容に聞こえます…が、ただそれだけ。小説としての面白味が感じられないんです。
おもちゃみたいに死体が出てくる、警察は防ごうとしてるのかどうか、描写すらない。
おかげで人は死にまくり(警備くらいしろよ!!)記号みたいに人が死んでパズルみたいに
探偵が考える、謎の気取った話し方、…正直言って嫌いなタイプだった。読みづらいし。
実は誰々がこうだったとか動機はこうなんじゃありませんかとか、都合良すぎる上に
ありえなさ過ぎてついていけない…。辻褄が合って驚かせりゃいいってもん
じゃないんじゃないの、小説って。それに雰囲気でごまかそうとしてないか〜い?
好きな人は好きなのかなぁ?大の本格好きな人でない限りオススメはしませんね。
「夏と冬の奏鳴曲」 麻耶雄嵩 ★★
---講談社ノベルス・93年、このミス17位---

如月烏有(うゆう)は取材のために小さな島を訪れた。和音という女優にほれこんだ者達が
20年ぶりに集まるという取材であった。和音に取りつかれたような者達、何かを隠している
ようでもある。そんな島で夏にも関わらず雪が降り、足跡のない場所で首なし死体まで…。

さて、内容の前に…文章について言うと正直嫌いなタイプでした。クセがある。
カッコつけてんだけどカッコ悪いような文章が寒いし、唐突だったりしてとにかく読みにくい。
加えて芸術論なんて語られちゃって最悪でした。…で中身ですが問題作と呼ばれるだけある。
足跡のない場所の死体とかありますが、これはどうでもいい。バカなオチが待っているだけで
ズッコケてしまいました。問題なのは明快でない謎が多いこと、後半に世界が壊れそうな
不気味な展開があるのですが(←この感覚は良かった)、結局何なんだ!?ってことが多すぎ。
すごい問題出されてトンズラされた気分だ。裏表紙に「メルカトル鮎の一言ですべてが解決する」と
書いてあるんですが、一体何が解決したんだろう。……もう説明できません、この本。

誰か簡単に説明できたら教えてくれぃ、あの映画・ラストの言葉の意味・二人のアレとかさ。
 「隻眼の少女」 麻耶雄嵩 ★★☆
---文藝春秋・10年、このミス4位、日本推理作家協会賞---

代々スガル様という女性の地位が受け継がれる琴折家、そこで跡継ぎの女性が殺される。村を訪れていた大学生静馬と
隻眼の少女探偵・御陵みかげは捜査を依頼され琴折家を訪れる。しかしみかげの推理も空しく連続殺人へと発展する。
ようやく犯人にたどり着いたみかげ。そして十八年後、再び村を訪れた静馬の前に現れたみかげそっくりの少女。
そして以前とそっくりの連続殺人が再び起こることになる。再び起こる事件はなぜ起こるのか。十八年前の真実とは?

古めかしい村に一族、巫女姿の探偵…とまぁ設定は良い。新本格と呼ばれたブームの頃みたぁい、と懐かしく思ったけれども
例のごとくというか…全然怖さがないよなぁ。人が殺されて犯人いるかも、という家で普通に生活できないでしょ。恐ろしくて風呂も
入れないし洗面所の鏡も見れないわ。当たり前に次々首をちょん切られて(そんな簡単にちょん切れる??)警察も何もできない。
蝋人形のような人物だねえ。…っていうか毎回こんな感想を書いてるね、パズルみたいとか。変わらないんだなぁ。
そんなことは割り切ってミステリ的に楽しもうと思うんだけども、ありえないことが多すぎて…さすがに褒められないわ。
スガル様と探偵みかげが対面したところで、とんでもないトリックをさらっと言ってるんですけど(笑)それ誰も納得できんだろう。
それに十八年後も同じような展開で殺されていくのもさすがに飽きる。雰囲気だけ楽しんだ。バカパク(6・2)
「遠い約束」 光原百合 ★★★
---創元推理文庫・01年---

大学に入り念願のミステリ研に入った桜子。密室での指輪紛失、ミステリ好きだった
大叔父の遺言探し…三人の先輩とのミステリ生活が始まった。連作短編集。

表紙が少女漫画かよ!…さてミステリ研の話です。桜子の他の先輩方は
口が悪いがクールな美形男・優しいおっとり系眼鏡男・わりと豪快な感じの男…って
少女漫画かよ!(二回目) 内容は日常ミステリに近いですね。ただ内容が「推理」というより
誰でも想像つくだろうことを理屈っぽく述べているというだけなのでガッカリしました。
表紙のせいかキャラ造形のせいか漫画チックに思えることが多かったですけど、先輩方の
ユーモラスで楽しそうな空気は悪くないかな。やっぱり女性読者向きなんだろうと思います。

「十八の夏」 光原百合 ★★★
---双葉社・02年、日本推理作家協会短編賞、このミス6位---

花をモチーフにした四編の短編集。
「十八の夏」…年上の女性に魅かれる浪人生の話。なんだかんだこれが一番好きだね。佳作。
「ささやかな奇跡」…妻を亡くした男が大阪へ越してきた。書店経営の女性と出会いを描く温かな話。
まぁ温かい話だけど別に奇跡じゃないだろぉが。単にいい話を書きましたって感じがイマイチ。
「兄貴の純情」…もう〜漫画じゃないんだから!という極端なキャラ造形に引く。イマイチ。
「イノセントデイズ」…ちょっと暗めでややこしいけどうまく前向きな話っぽくまとめました。

賞も取ってこのミス6位かぁ…退屈だったぞぉ。いい話は好きなんだがクサさが気になって
物語に入れず。文章がダラダラしちゃって次が読みたいと思えないのも一要因か。全体的に
甘い感覚なのも苦手かな〜。コーヒーより砂糖が前に出てるような甘ったるいコーヒーみたい。
お上品な甘さは好きなんだがね。好みなので他に何とも言えないが、とにかく文章にも感覚にも
ついていけなかった。それよりこれミステリーじゃないよなぁ…。第一謎はどこなんだ謎は。

 「開かせていただき光栄です」 皆川博子 ★★★☆
---早川書房・11年、このミス3位、本格ミステリ大賞---

18世紀ロンドン。解剖学がまだ発達していなかった中、外科医ダニエルとエドやナイジェルら弟子達のチームが
墓堀からこっそり手に入れた妊婦の死体を解剖していた。そこへ取り締まりが来たため一旦暖炉へ隠すが、その後
見知らぬ死体が二体登場した。四肢をもがれた者、顔をつぶされた者、これは一体何なのか。

外国の名前ってわかりにくくてとっつきにくいかと思っていたけれども、弟子達がユーモラスなので心配いらなかった。
チームの皆が仲良くて解剖してるけどさわやかな印象すらあった。盲目の判事もダニエル先生も魅力的な造形だった。
盲目な代わりに聴力などが鋭敏な判事フィールディングと頭脳明晰なエド、内向的なナイジェルらの会話がスリリングで
おもしろい。何か隠し事をしているのを察知する判事と見透かせないエド、ミステリっぽくてワクワク。さて物語は
解剖医チームのパートと、詩人を目指してきたが政治運動に巻き込まれ投獄されるネイサンのパートが交互に展開する。
そして第二、第三の事件が起こっていくわけである。基本は判事目線になるけれども、いろんな立場と思惑が
入り組んでいたのでややこしくてトーンダウンしちゃった。怪しげな職業やらお店やらいい加減な裁判など18世紀の
ロンドンという舞台設定も良し。ミステリあれこれより会話ややり取りが魅力的な一冊だったかも。バカパク(8・6)
 「彼女がエスパーだったころ」 宮内悠介 ★★★
---講談社・16年、吉川英治文学新人賞---

とある島の猿が火を起こすことを覚えると、その技術が遠い他の場所に伝播していった現象を調査する「百匹目の猿」や
脳内に接触して暴力衝動を抑える治療オーギトミーを施された歌手を描いた「ムイシュキンの脳髄」など、記者である
語り手が超常現象の関係者を取材していく中で、様々な事件や真相にぶつかる六編の短編集。

六編ともに違うテーマの超常現象や仮説が登場するので彩りある短編集で、難しくなく読みやすい。上記の二編など
現象自体がギリありそうで興味深く読めるものもあるが、水に声をかけると浄化されていくものや、ほとんど
ただの水を提供するホスピスなどは、さすがに胡散臭すぎてテーマそのものは面白くない。ただ本書は超常現象を
突き詰めて思考したり、これが真実だとかインチキだとかそういったことを追及しておらず記者としての私が巻き込まれる
展開が多く、ミステリと言われればそれっぽい。スプーン曲げができるエスパーの彼女に懐かれたり、テロに巻き込まれて
いたりしている。取材という形を取っているので、質問していることが多いし「こういったことが起こった」ふうに外から見ている
記事風な文体だったのであっさりしていたので、どれにも入り込めなかったけど時間ない時の短編にちょうど良い。
ヒューマンドラマSFミステリ風味…みたいな感じでしょうかね。シブSF(4・8)
 「あとは野となれ大和撫子」 宮内悠介 ★★★★
---KADOKAWA・17年、星雲賞---

カザフスタンやウズベキスタンに近くにあるアラルスタン、大統領の暗殺事件が起こり国を運営していた男どもは逃亡。
ピンチに陥ったが、国の教育機関「後宮」にいた少女達が立ち上がり臨時に国を動かすこととなった。みな事情があり
後宮に引き取られた少女達、日本人のナツキは国防相を与えられる。自分達を軽んじる軍部に、外からは過激派、
隣国達も様子をうかがう中、襲撃・戦闘から、コスプレ・演劇まで少女達は国を守るために奔走する明るく激しい物語。

とても不思議な感覚の読み味だった。ラノベなのかな?アニメの原作なのかな?と思っていたのに、設定自体は中東に実在する
国々に虚構を足したもので、大統領の暗殺に国の危機に襲い掛かるあれこれを暫定的に切り抜けるというシビアな内容だったり。
リアリティある設定と、そうじゃない軽い展開、そのちぐはぐな感覚が慣れると癖になって面白いですね。過激派君ともちょっと
恋愛っぽいところもあったりなんかして。全体的には明るい雰囲気で、ユーモアのある会話劇も多かったしビジュアル的な
ところが多いからアニメっぽく感じたのかな。ナース服で戦場へ行ったり、コスプレをしたり皆の前で演劇をすることに
なったりする。若い女の子達がとりあえず与えられた職務をそれぞれこなしていたら大衆を動かして、軍隊を動かして
事態が好転していく。暗殺・爆破・国の危機、こんな物騒な内容でこんな楽しい活劇になるという不可思議さ。過激派も暗殺者も
現実もこんな明るく単純なら世界も平和になるんじゃないかと思えるなぁ。友情やら信頼やらが自分を救ってくれる。
ピンチにはヒーローがバイクで駆け付けてくれる。知らずに悪人には銃弾が当たる。良くも悪くも「物語」の世界だなぁ。
いろんなことがうまく収まって大団円、という気持ちよさもあるなんだかんだ楽しい冒険活劇。バカSF(8・5)
「セロ弾きのゴーシュ」 宮沢賢治 ★★★☆
---角川文庫クラシックス・96年---

表題作を含め全部で11編収録されている。子供がキツネの幻燈会に招待される優しい話「雪渡り」、両親を無くした
男が苦労しながらも成長。やがて人々の助けになるよう働き、自分の身を尽くすラストが印象的な「グスコーブドリの伝記」、
セロ弾きが下手な青年が夜に練習していると次々動物が訪れて…という「セロ弾きのゴーシュ」などなど。やはり個人的に
「猫の事務所」が好き。猫の歴史や地理を扱う事務所で猫の事務長や書記官がいるという設定でもう笑える。がんばり屋なのに
かまどで寝ているため体が煤で汚く、そのせいでいじめられてしまうかま猫がかわいそうな話でした。

ミステリが多くて偏りがちなので読書の原点に戻ってみようと思って読みました。この話にはいろんなものに心が
あります、自然と一体な雰囲気ですね。汽車のシグナルは恋をしてるし、動物は話すし人間とも関わってくる。
情景や雰囲気だけで優しい空気が漂ってて良いですね。たまにはこういう話を読むのも凝り固まった頭がほぐれて
良いですね。昔の心を思い出すかもよ?

 「羊と鋼の森」 宮下奈都 ★★★★+
---文藝春秋・15年、本屋大賞1位---

高校生の頃に出会ったピアノの調律師・板鳥の仕事に心を動かされた外村は、ピアノをやっているわけでもなかったが
調律師になった。調律の先輩がたや顧客たち、特徴の違う双子の姉妹たちと触れ合いながら、調律の世界の奥へと目指す。

すごくいい気分になったなぁ。なんせ登場人物が真摯にピアノや調律に向かうまっすぐな人ばかりなんだから。
気さくな柳さん、斜に構えたような秋野さん、カリスマ板鳥さん、個性的だけどどの人も仕事人だ。新しい世界を知ることが
できる職業小説とも言えそうな本書だけど難しい部分はなく、感覚的な表現が多いので(実際そうなのかもしれないけど)
とても読みやすい。音を合わせるだけでなく、相手の要求を組みとって調律する。「明るい音」「丸い音」「尖った音」…どれだけ
調律しても相手の技量や弾き方を教えたほうが早い場合もある。会場や状況も考えなければならない。知らない調律の世界の
おもしろさや奥深さをこれだけ魅力的に書けるってすごいな。遠慮がちだった双子の姉妹の和音が、ピアノの道へ進むと決意する
セリフがハイライト。名シーンですね。背筋がゾワッとしました。ピアノに真摯に向き合い考えることの多い外村を描いた筆致は
音楽を扱っている小説なのにも関わらず北海道の山奥の森を思わせるしんしんと静かな感覚のする文体だと思う。
悪意ゼロの穏やかな気持ちになれる幸せな読書タイムを味わいたい人にオススメ。属性的にはシブ青春(9・9)映画化も
したみたい。板鳥さんが三浦友和らしいんだけど、板鳥さんはもっと細身じゃないかなぁ、イメージ的に。
「人質カノン」 宮部みゆき ★★★
---文藝春秋・96年---

七編からなる短編集。表題作→会社の忘年会の帰りに立ち寄ったコンビニで強盗に遭遇した
遠山逸子、無事に済んだ逸子だが強盗が赤ちゃんの玩具ガラガラを落としていったことに気づく。

ミステリーと裏表紙に書いてあるが、ほとんどミステリ色はないと言っていい短編集かな。
謎があったり事件が起こったりではなくて、ひょんな所から垣間見える人の心情といったところか。
いじめが関係する短編がいくつかあり暗澹とした部分もあるが、作中で一筋の救いが見出されるのが
小説としてはやはり気持ちいいものだ。例えば「生者の特権」では恋人に捨てられ自殺を考えるOLが
いじめによって深夜の学校に忍び込まなければならない小学生とともに行動する話だ。彼女らの
冒険にもワクワクさせられるし、冒険後にポジティブな力を感じているところが読後感の良さを
もたらしますね。文章も読みやすくてわかりやすい。売ろうとしているマンションの部屋の上階から
水漏れして右往左往する主婦などリアルに思えるし、コンビニで冷蔵ケースの牛乳が取りたいけど
酔っぱらいが背を向けて立ってて取りづらいなぁなんて描写もほほえましくておかしい。こんな庶民的な
感覚が匂うのも作者の魅力かな。優れた短編というより佳作揃いという印象だがファンなら必読?

「長い長い殺人」 宮部みゆき ★★★★
---光文社・92年---

保険金殺人疑惑のある一連の事件の関係者達、刑事・被害者・強請屋・探偵…物語は彼らの
財布の視点から語られる。十個の財布の物語を通して一つの事件を形作る、というパターン。

財布の視点ってことで若干ユーモラスな表現とかあって面白かったです。
魅力的な登場人物がいて読みやすい作品でした。それにシメ方が良いね。
さて、今回は犯人当てではありません。事件の真相もさほど物語の核ではないように思えました。
『一つの事件には小さな事でもいろんな人が関わっていてそれぞれに感情があって
人間模様がある』ってことを感じさせてくれる宮部みゆきの特徴が出ていた気がします。
不満を言えばもっと犯人の記述が読みたかった、というところ。これだけしか書かないのなら、思いきって
犯人を登場させないくらいで良かった気がします(つまり…犯人の財布の章だけ失くすってこと)

「鳩笛草」 宮部みゆき ★★★☆
---カッパノベルス(光文社文庫)・95年---

短編・中編で三編収録。表題作→触れることで他人の心が読めてしまう貴子は刑事である。
この能力を生かすべく警察で働いてきたのに…近頃能力が衰えつつあるのだ。能力があったから
役立てた。もし無ければ…そんな貴子の苦悩をよそに現実に事件は起こる。

三編ともある能力を持つ女性が主人公。主人公達は能力で悪事を企むわけでなく、
能力があることに苦しみ、うまく付き合おうとしています。こういう所が宮部氏らしい視点ですね。
力を持っていても日常を生きている一人、に感じさせるのも上手。力を『持ってしまった』女性達の
心の動き、悲しいことも多いですが、個人的には鳩笛草のラストの温かさが好きでした。
短編の一つ「燔祭」は「クロスファイア」の主人公の女性の話。

「クロスファイア」 宮部みゆき ★★★★
---カッパノベルス・98年---

念力放火能力を持つ青木淳子は偶然から、死体を捨てに来た若者達に遭遇した。
このために自分はいる…淳子は若者を焼き殺そうと力を使うのだが…。悪人を裁く
淳子、一方では不可思議な焼殺事件を石津刑事らが追っていた。

「鳩笛草」の短編の女性が主人公です。のっけから悪党に対して能力を使って処刑を
行うというアクションになってます。で、同時に能力を持ってしまった苦しみや裁くことへの
戸惑いなども描いた話。“装填された銃”として生きる主人公ですが、正直自分が能力を
持っていた場合ここに出てくるような悪党を裁くのなら躊躇しないだろうなぁ。法を無視して
私刑にする思考の危険さなんて通常の理論なんて能力を持ってたら頭からなくなるだろうしね。
物語のラストでもやり取りがありましたが、穏健派か処刑派か読者も分かれるだろうね。
久々の宮部作品でしたがやはり読みやすいですね。細かいけど重くないし。ちなみに今回は
エンタメ度が高め。個人的には最後まで炎上エンタメで突っ走ってほしかったでが、後半は控えめ。

「模倣犯」 宮部みゆき ★★★★★
---小学館・01年、芸術選奨文部科学大臣賞
毎日出版文化賞特別賞、このミス1位、文春1位---

厚いので手に取りにくい方もいるでしょうが、すごい作品でした。すごく描写が
細かいですが「理由」と違い必要な部分を的確にヒットしていく、といった感じでした。
悪党と遺族をうまく描いた名作。登場人物が皆、生々しく呼吸していました。他をねじふせる
悪党の弱い部分、そして弱者の中に芽生える強さや脆さなんて見えたりしました。
第三部で「何だこの展開は?」と思いましたがそれでも5点満点だ。

読んでしばらく経つのであまり書けないが圧倒されました。

「錦繍」 宮本輝 ★★★☆
---新潮社・82年---

まさかあなたと再会するなんて…男が愛人との無理心中を起こしたことをきっかけに
離婚した二人が十年ぶりに偶然の再会、ここから二人の間で手紙のやりとりが始まる。

すべて二人の手紙で構成されています。途中までは今までの経緯「過去」の吐露が多く
色々ありはしますがちょっと退屈。ですが後半「今」の話も多くなり前向きな内容になっていきます。
男と一緒にいる令子という女性や、女の父親なども男女の再生にいい影響を与えているようでした。
決して明るい内容ではないのですが読後はすがすがしいとさえ思えます。でも評価の高い
作品なのですが心に残るほどではありませんでした。私の読み取りが浅いせいでしょうけど…。
作中の『生きていることと死んでいることは同じことかもしれない』という言葉
うまいこと言ってるんだろうけどイマイチ伝わんなかったよなぁ…。

「パン屋再襲撃」 村上春樹 ★★★
---文藝春秋・86年---

夜中に起きて空腹を感じた僕と妻、僕は学生時代にパン屋を襲った話をした。
襲撃以来かかった呪いを解くためもう一度パン屋を襲うべきだと妻は言い出した。

あれは何だったのだ?という細かいことにはこだわらない村上世界。不思議なことが
起こってそのまま流動的に完結するような世界。その展開が必然のように感じさせるのが
村上流なのかな?文章もはっきりしないところが心地良いですね。表題作と「象の消滅」は
独特の世界観があって良かったです。でも全体的に村上春樹にしか書けないって感じでも
ないかなぁ。それにしても主人公が「やれやれ」と言ってため息つきすぎ(笑)
あと夜中にお腹が減った時に「コンビニ」という選択肢がないのも時代を感じさせるね。

「スプートニクの恋人」 村上春樹 ★☆
---講談社・99年---
すみれは22歳で恋に落ちた。相手は17歳年上の…女性だった。

うまく感想もあらすじも書けない。すみれに魅かれる「僕」ってのもいて微妙な
関係があって…自己が半分失われているとかあっちの世界にいってるとかそういう話も出る。
全然興味がなくって上の空で読んでました。この人ってなぜこんな人気なんだろう…。
ともかく個人的には文章が嫌だった。気取っているようで比喩を連発するところは
かなり鼻につく。登場人物も好きになれないし…感覚的に何も良いものを感じられず。
村上春樹のファンにはすんなり読める話なんでしょうか?

「レキシントンの幽霊」 村上春樹 ★★★☆
---文藝春秋・96年---

ケイシーが出かけている間、彼の家で留守番をすることになった僕。仕事をして過ごすのだが
夜になると階下からパーティをしているような音が聞こえてきた。一体これは何なのだろう。

「スプートニクの恋人」という彼の作品を読んだ時は、もうこの人とは縁がないかなと思いましたが
この短編でかなり認識が変わりました。氷男と呼ばれるものと結婚する女や緑色の獣など
不思議な世界もあれば、いじめの話もある。どれも共通しているのが主人公だけを包むような
静かな孤独感が良かった。孤独になった者、やっと孤独になった者、孤独を生きる者など
どこか共通点のある短編集でした。しかし「スプートニク…」では感じられなかった文章の
魅力が深くしみ渡りました。読んでからだいぶ経つので比べられないがずいぶん違う印象でした。
純文系では多いかもしれませんが、起承転結の起承転までしかないようで…でも完結してるような
タイプの小説って説明もしにくけりゃ感想も書きにくくて困りますね。どこまで言っていいのやら(困)。
「希望の国のエクソダス」 村上龍 ★★☆
---文藝春秋・00年---

テレビでパキスタンにいる日本人の少年の映像が流れた。日本を捨てた
少年を見て中学生達の何かが弾けたのか、集団で不登校を始めた。
一部を先導役にネットビジネスを成功させ、世界を動かすほどの力をつける。

2000年に出版された本だが、内容は2000年から数年後の近未来。
難しいね。なかなか読ませるのは確かだがいろいろ首をひねる所も多いと思う。
まず途中から経済用語が急に増える、コンピュータ系の用語もやや増えるので読みにくい。
精通してないと理解できないだろうから何となくわかれば良いのでしょうかね?
それから…登場人物が馬鹿(国会議員とか)と馬鹿を翻弄するもの(主に中学生)と両極端に
描かれるのも何だか好きになれない。中学生達はいろいろできる立場でやや乱暴な
論理で様々なことを行う、簡単に言えば「中学生の反乱」です。このスケールの大きな内容は
面白いと思うのだが、結局↑のあらすじ+アルファ程度なのでもっと動きが読みたかったも。
日本の問題への投げかけ、人それぞれ考えることも感じることも違うだろうね。
個人的には経済本としては面白いけど小説としてはイマイチ…と思った。

終盤彼らは自治地域を作るのだが…果たして希望はあったのでしょうか?
どことなく空しさを覚える読後であった。

「最後の家族」 村上龍 ★★★
---幻冬舎・01年---

内山家は長男の引きこもりという問題を抱えていた。母親はカウンセリングに行き、
娘も将来を考え始める時期だった。父親は会社が傾きそれどころではない状態だった。

問題は多いが結構リアルにいそうな家族像だ。前半は四人の視点で同じ場面が
繰り返すのでちょっと面倒だが、各人の気持ちを知るというのもまた良いかな。
救おうとすることで相手を救うことができないこともあるし、誰かが自立することで
親しい人を結果的に救うこともある、というのは納得。そういうこともありそう。
最終的に家族はそれぞれの道に踏み出すが、暗いラストではないと言えるのだろうか。
まあ明るいラストとも言い難いけど…。ワガママを言えばもうちょっとストーリーが
欲しかったかも。重いテーマだがあっさりめの印象、もっと深くてドロドロかと思ってた。

 「消滅世界」 村田沙耶香 ★★★
---河出書房新社・15年---

人工授精が一般的になり、夫婦でセックスは近親相姦扱いのタブー。夫婦は家族であり、恋愛は他人かキャラクターで
済ませるのが普通。そんな日本で両親のセックスで誕生した雨音は、ヒトの恋人も持ち体も重ねる少し変わったタイプであった。
親にも違和感があり、恋愛しない友人とも違う。そんな雨音は夫と共に実験都市へと移住することになる。そこではさらに
進化し、簡略化された人類があった。そこでも違和感を覚える雨音、正しさに翻弄され夫との距離ができていく。

セックスをする必要がなくなっている世界、夫とは家族であり恋人の延長ではない。そんな設定にあれやこれや言っても
仕方ない。でもまぁ現実世界の者からすれば読んでて疑問がつきない違和感だらけだ。夫婦であることに特別な部分がないから
もはや意味がない気もするし。恋愛と切り離された生殖に需要あるかな、とか。でもそうやって正しさは移ろっていくものだし
そうなった世界なのだ。年寄りから見て若者の文化が理解できないように、変わった世界というのは当たり前がもう違う。
自分たちは、正しいと思っている現実世界に洗脳されているにすぎないからね。ただ読んでて思ったのはキャラと恋愛してる人なんて
もうすでにいるだろという気もするが…。二次元を俺の嫁、とか言ってすでにヒトと恋愛してない人っているからありえる未来かもね。
前半の少し進化した世界に対して、後半になるとさらに進化を遂げた姿へと変貌する。もはや個人の特別感すら減り
ただの人類の一部となってしまう。子供はみんなのもの、自分は子供ちゃんみんなの親であり愛情いっぱい与えましょう…。
これは楽園なのか、解放なのか。でも合理的に簡略化されていけばこうなるのかもしれない。自己の責任から解き放たれた人類、
どう感じるかは人類がどうありたいかという自分の欲求次第だね。不気味だなぁと思った自分は、自分の欲求やワガママを
気ままに発散したいし、自分は特別な自分でありたいし、この生きにくい世界でよろしいです。前半は感覚的に
つかめなくてイマイチ面白くなかったが、後半のトンデモ消滅世界が空恐ろしい。視覚的にも訴えてくるので一気読みした。
読書だったり家族だったり、会社の人間との関係、なくなっていくもの、当たり前になくなってしまうもの、あるんだろうなぁ。
活字本はなくなってほしくないなぁ。あと日本人の相撲取りとか。タバコはなくなってもいいよ。シブ知(6・8)
「ドスコイ警備保障」 室積光 ★★★★
---アーティストハウス・03年---

横綱を目指す夢破れ廃業した元力士達、彼らの就職問題の解決策として警備会社を作ろうという
案が持ち上がった。芸能プロダクションを持つ敦子や同級生の支えもあり始まった力士だらけの
ドスコイ警備保障、仕事していくうち話題も集め会社は成功を収めていく。

こりゃ愉快!ってな作品。リアリティなんてまるでなし。警備会社として結果を残して大人気となり
世界的スターからもオファーが来るようになるほど大出世。個性溢れるいい人達が活躍するのは痛快。
完全に「おはなし」な雰囲気が楽しいし、元ネタがわかる有名人が出てくるのも笑える。マイク○イソンとか
奇行の目立つ肌の白い黒人歌手とか…あと松村もあの人なんだろうなぁ。楽しく笑って時にはホロリ
暑苦しくも清々しい一冊でした。実際に元力士の警備会社って作ったら面白そうですね強いわけだし。
こんなうまくはいかんだろうけど。文学って感じは皆無だが気楽に読める本を求める人にはオススメ。

「月光の夏」 毛利恒之 ★★☆
---講談社文庫・95年---

戦争中の日本、二人の若い特攻隊員が小学校を訪れた。『死ぬ前に思い切りピアノが
弾きたい』とベートーベンの月光を弾いた。その出来事はその場にいた吉岡公子の心にも残った。
そして何十年か後、公子は小学校であの日のことを講演することになった。

一言でいうと戦争の話。生きては帰れないと知りつつ敵艦にぶつかる無念や悲しみ、隊員達への
無慈悲な扱い、何十年経っても忘れられない気持ち…。戦争を伝えるという意味のある小説ですね。
ただですね、いかんせん題材に文章が負けているように感じます。主人公の女性が隊員の無念に
涙を流す場面が多々あるが、その心の揺らぎがうまく描かれないので共感しづらい。
とても内容が重いのに深く入れない、骨はあるのに肝心の肉の部分が少ない文章という印象でしょうか。
内容がいいだけに…ちょっともったいない気がしますね。しかしそれでも死にゆく隊員の言葉は
胸にせまります。死ぬとわかっていながら機に乗り空を飛ぶシーンも胸に残りそう、どんな心境か
想像もできんからね。ちなみに実話を元にしたものだそうで、映画化もしたんだそうです。

「星の降る森で」 本山賢司 ★★
---東京書籍(新潮文庫)・92年---

森には何かがいる。焚火を起こし物を食べ、釣りをする。緑に囲まれ生きる
人間や動物や魚、自然の中に映る美しさや激しさを丹念に描写した一冊。

以前から他の本の合間に一編ずつ読んでいたので、はっきりとは覚えていないのですが
大自然を舞台に丁寧にその魅力を書いていた本です。アウトドア小説とでも名付ければ
いいんでしょうか?新しいジャンルだなと思って読んでみたんですが、残念ながら私の好みでは
なかったです。…というわけで、今回は『こんな本があるぞ』という紹介だけに留めておきます。
描写が下手ってわけではないんですが、向き不向きの問題かなぁと思います。
この小説はアウトドアや自然が大好きな人に読まれるべき一冊なんでしょうね。

ところで作者はイラストレーターらしく魚や動物の上手な挿絵がいくつも描かれていました。
「永遠の出口」 森絵都 ★★★★
---集英社・03年、本屋大賞4位---

両親と姉と暮らす紀子が成長していく様子を描く連作短編集。小学校の頃の誕生会、学校の
嫌な先生、悩んだ中学時代、恋した高校時代…様々な経験を経て人は成長し大人への道を辿る。

小学校から高校…思春期の心が非常にうまいですね。親に対して自分に対して
あぁ、こういう部分あったな…と思える確かさがあって、ふと心に忍び込まれる感覚がありました。
あの頃はこういう出来事があってこの場面が印象に残ってるな、と振り返るような暖かさが
どことなく漂っている視点も良いです。永遠に見れないことや触れられないことなんていくらでも
あって…でも後ろには自分で選んだ道がある、そんな前向きに後ろを向いた感覚も良かった。
話自体はフィクションとしてはよくあるかもしれないけれど味がある。ちょっと違うけど重松清と
似てる部分があるのかもしれません。短編ごとに話としてもまとまってて楽しめました。
残念なことは私が主人公の生きる世代とは違うし、女性ではないので共感には限界があること。
ピントが合えばもっと奥まで忍び込まれたかもしれないけど。というわけで女性にオススメ。
「すべてがFになる」 森博嗣 ★★★★☆
---講談社ノベルス・96年、メフィスト賞、文春8位---

コンピュータで管理される研究所で完全に隔離された生活を送る真賀田四季博士。
彼女の部屋から機械に乗せられた死体が運ばれてきた。ウエディングドレスをまとい、手足の無い
死体。そして彼女の部屋に残されたパソコンにはこう表示されていた…「すべてがFになる」と。

理系とよく言われているようだ。確かにカタカナやコンピュータ用語は多い。…が、別に詳しくなくても
十分読める。若い人はほぼ大丈夫でしょう。本書の魅力は雰囲気だろうか。犀川博士は合理的で
理屈っぽい考え方で、環境も人との連絡など機械ばかりで人間臭さがまるでない不思議な雰囲気だ。
新本格は大抵そうと言われればそれまでだが。そして登場人物はいかにも理系っぽくてクセのある人間が
多かったですね。理屈っぽさや独特の会話が新鮮で面白かったな。何もあんなトリックしなくても
…とか思うかもしれないが、新本格にそれを言ってはおしまい。このジャンルならではの怖さやスリルや
トリックの面白さは十分楽しめたね。ちなみにFの意味、私がわかるはずもなかったわけだが…。
この雰囲気を表すと(綾辻行人+京極夏彦)×理工学かな(かえってわかりにくい?)

「冷たい密室と博士たち」 森博嗣 ★★★☆
---講談社ノベルス・96年---

低温度実験室を訪ねた犀川と萌絵。その夜は研究所の人達と飲むことになった。
そのうち大学院生の二人がいない、という話になった。

例によって新本格です。「どうだ解いてみよ」と言わんばかりの設定や展開。「すべF」は度肝を
抜かれる話だったので今回はどんなすごいネタだろうと思い読んでいたが、普通の本格とも言える話。
論理的に読んでいけば見抜ける人もいるのでは(私はわからなかったが…)。しかし前回の
雰囲気はなくなっていません。この作家の雰囲気が嫌でなければOK。
あなたは作者の問題が解けますかな?

「笑わない数学者」 森博嗣 ★★★
---講談社ノベルス・96年---

数学者・天王寺翔蔵の館に来た例のコンビ。翔蔵は庭にある大きなオリオン像を消すという。
庭に出ると確かに無かった。そして夜が明けると再び銅像は現れていた。ついでに死体も・・・。

トリックも〜犯人も〜バレバレどす〜。大抵の人はわかると思います。このトリックにしては
ちょっと長いな、と思いました。犀川&萌絵の微妙な関係ってのも別に興味ないし・・・。
さあ解け!感覚はあります。ゲームのような。ようし解いてやる!と呼応したくもなりますね。
それと今回は小説内で答えを出さないこともあり、読者はじれったいったらないです。やたら難しいし。
また理系な感じでしたね、偏屈な人間は出るし。このシリーズ全部読むぞって人はどうぞ。
(ネタバレにより消えます)最後のシーンの老人・白骨死体・地下の老人は誰が誰なのでしょう。
最後の老人のあの考え方は片山基生?じゃあ残りは??わからん〜〜。
(以下は小説内で出される問題です。この小説を読む気がない人で、頭の体操をしたい人だけどうぞ)
五つのビリヤードの玉を真珠のネックレスのようにリング状に繋げてみる。この五つのうち隣合うものなら
いくつでも取れるとする。一つでも五つでもいい。離れているものは取れない。その和が1から21までの
すべての数が出来るようにしたい。どのようにネックレスを作ればよいか?リング状ですよ。
ちなみにビリヤードの玉は15まである。解答はこのページの一番下に隠れているので反転させて。

「詩的私的ジャック」 森博嗣 ★★★
---講談社ノベルス・97年---

大学で発見された死体、服は着けておらず腹部には文字のような傷がついていた。
似た事件はもう一件続き、どちらも傷があり密室状態であるという共通点があった。
そんな中、ロック歌手に疑惑が…。彼の曲の歌詞は事件と似た部分があるのだ。

犀川・萌絵シリーズも四作目。この雰囲気もさすがに新鮮ではなくなりましたが、文章は
読みやすいし、間に挿まれる犀川の会話や見方はなかなか好きで癖になってます。今回は萌絵の
犀川への想いってな部分が多かったのですが、これにはそれほど興味がないので少し疲れました。
最初の密室はすぐに明かされます。犯人につながる推理はややこしいけどそれほどブッ飛んだもの
ではなかったと思います(相変わらず見抜けなかったけど…)。論理的な解明を楽しむのが趣旨であろう
新本格だからこれは言っちゃダメかもしれんが…動機に繋がる犯人の思考は理解できない。

「まどろみ消去」 森博嗣 ★★☆
---講談社・97年---

「誰もいなくなった」を紹介(裏表紙引用)…ミス研の企画した「ミステリーツアー」。
参加者は屋上で三十人のインディアンが踊るのを目撃するが現場に行ってみると誰もいなかった。
屋上の入り口にいた見張りは、誰も見なかったと証言。いったい三十人の人影はどこへ?

短編集で11編が収録。いろいろな話がありました。↑のようなクイズ問題
叙述トリックもの、人の狂気をサラリと見せるようなもの、何だか詩的な終わり方の
ものもあった。いろんな種類があるので好きなものはいくつかあるだろう。今までとは違う
変わった印象のものが多かった。西之園萌絵も短編のうち二つに出てきます。
う〜ん短編集って上手く説明できないなぁ。とりあえずこの辺で(汗)

「有限と微小のパン」 森博嗣 ★★★★☆
---講談社ノベルス・98年---

ゼミ旅行のため長崎にやってきた萌絵と友人達。テーマパーク地下にある会社の社長と
昔の親同士の約束で許婚だった萌絵は、会うことになっていたのだった。しかしテーマパークで
不可思議な事件が萌絵を待っていた。そしてそこには真賀田四季の影が見え隠れしている。

犀川&萌絵シリーズ、これが完結編なんだそうです。まだ途中読んでないんですけど。
というわけで(?)「すべF」に登場の真賀田四季が登場しております。「すべF」読んでから
だいぶ経つので真賀田四季ってこんなキャラだっけ?と思いましたが存在感は充分。
今回で気に入ってしまいました、もう終わりだけど。さて内容は…まず不可解な殺人事件達
死体消失に密室殺人…etcがメインですかね。ええまったくわかりませんでしたよ、どうせ。
しかし今回は大掛かりで驚愕のトリックでした。不覚にも「は??」とポカーンとしてしまった。
その後、えっ…馬鹿なっ!と私の頭は大恐慌に。いやはや、このトリックだけで結構満足しました。
そしてメインと並行して見どころなのが真賀田四季。彼女は何が目的なのか、犯人は彼女なのか
事件のどこまで真賀田四季なのか…魅せやがるなぁ。そして犀川・四季で締めくくるラストも
痺れるなぁ。満足満足。舞台がハウステ○ボスってのも完結編らしい感じがしますね。
と言っても犀川の思考遊びや理屈話はいつも通りだし、地下に研究所があったりと今までの
雰囲気はそのままですけどね。文庫850Pと長いですけど最後だから大目に見よう。




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